調査実施の背景業界を問わず生成AIの活用が急速に進む中、ファッション業界においてもその導入が本格化しています。展示会のDXを支援する当社は、本調査で得られた知見を、当社サービス『TERMINAL』のAI機能開発や、顧客のビジネス成功を支援する取り組みの強化に繋げてまいります。本調査では生成AIに関する12の設問に、ブランドとしてTERMINALを利用する様々なポジションの147名(58社)から回答をいただきました。調査結果から得られた重要なインサイトをレポートとして公開します。調査を通じて得られた5つのインサイト日常、業務利用ともにも70%超が活用する一方、活用における意識は二極化業務利用では「個人で利用」が最多。現場主導で進む生成AI活用と「シャドーIT」のリスクと課題「信頼性」と「安全性」が最大の懸念事項。導入・活用の壁となる「環境整備」の難しさや活用意欲のギャップAIの活用は「事務作業の効率化」が中心。「分析や企画」など付加価値生産に向けた活用は限定的TERMINALのAI機能による「通常業務の効率化」に加え、「データ分析」や「コンテンツ生成」といったニーズも顕在化Insight. 1日常、業務利用ともにも70%超が活用する一方、活用における意識は二極化日常生活において「頻繁に利用」「時々利用」すると回答した層は78.4%にのぼり、生成AIが広く浸透していることが確認できます。その流れは業務にも波及しており、業務においても70.9%が「頻繁」「時々」利用していると回答しました。生成AIの業務活用は、組織全体にわたって浸透し始めているものの、その活用意識とレベルは役職によって大きく異なることが明らかになりました。戦略層(経営層・役員) は、利用頻度自体は高くないものの、その動向を注視し、戦略的な視点で活用機会を模索しています。推進・管理層(部長クラス) は、最も積極的に活用している層がいる一方で、そうでない層も存在し、組織内での導入における温度差が課題として浮き彫りになっています。現場層(係長・主任クラス、一般社員クラス) は、日々の業務効率化ツールとして、生成AIを実用的に活用しています。しかし、「全く利用していない」層も一定数存在しており、全社的なスキルアップや利用促進のための教育・サポートが今後の鍵になると考えられます。結論として、組織が生成AIの可能性を最大限に活用するには、役職ごとの特性に合わせた戦略的アプローチが必要です。特に、経営層のビジョンと現場の具体的ニーズを効果的に結びつける中間管理職の役割が重要と考えられます。Insight. 2業務利用では「個人で利用」が最多。現場主導で進む生成AI活用と「シャドーIT*」のリスクと課題*シャドーITとは、企業が把握・管理していないIT機器やクラウドサービスを、従業員が個人的に業務で使うことです。情報漏洩やセキュリティリスクにつながるため、企業は適切な管理が求められます。最も注目すべきは、「個人で契約しているサービスを業務で利用している」が39.2%と最多である点です。これに「会社が許可しているが、個人で契約したサービス」を合わせると、回答者の約半数(48.2%)が、個人で契約したサービスを業務に活用していることになります。この結果は、社員が自らの判断で生成AIの利便性を感じ、業務に取り入れている実態を示しています。会社が正式なサービスを提供していなくても、現場レベルでの活用はすでに広範に進んでいることがわかります。ただし、現場の自発的な活用は生産性向上の原動力となり得ますが、同時に「シャドーIT」として以下のリスクをはらんでいます。情報漏洩リスク: 機密情報や個人情報が、適切なセキュリティ対策が施されていない外部のAIサービスに送信される危険性があります。コンプライアンスリスク: 会社のセキュリティポリシーや情報ガバナンスのルールに違反する可能性があります。不均一な活用: 正式な導入ガイドラインがないため、社員によって活用のレベルや品質にばらつきが生じる可能性があります。このことから、多くの企業が生成AIの活用に対して、積極的な導入を進めている段階ではないか、あるいは明確な方針を打ち出せていない現状を示唆しています。社員の自発的な活用が先行している今、企業には以下の対応が求められるでしょう。公式サービスの導入:社員のニーズに応え、セキュリティを確保した上で利用できる環境を速やかに提供すること。ルール整備と教育:情報管理のルールやガイドラインを策定し、シャドーITのリスクを回避するための社員教育を実施すること。Insight. 3「信頼性」と「安全性」が最大の懸念事項。導入・活用の壁となる「環境整備」の難しさや活用意欲のギャップ最も件数が多かったのは「情報の信頼性・正確性に懸念」(63件)でした。また、「セキュリティ面での懸念」(56件)も同等に高い件数となっています。 このことから、多くのユーザーは生成AIの利便性を認識しつつも、出力される情報の信頼性や、社内・個人の機密情報が外部に漏洩するリスクを最も懸念していることがわかります。「情報の信頼性」や「安全性」と並んで、「適切なサービスの選定が難しい」(56件)という回答も非常に多く、企業や個人が生成AIを導入・活用する上での環境整備に課題を感じていることが明らかになりました。 さらに、「法規制やガイドラインが不明確」(32件)という回答も多く、技術が急速に進化する中で、法的なルール作りや社内での利用方針の策定が追いついていない現状がうかがえます。「学習リソース不足」(26件)や「活用方法・用途がわからない」(22件)といった課題も上位に挙がっています。これは、生成AIに関心はあり、活用意欲があるものの、具体的なノウハウやスキルを習得する機会が不足していることを示唆しています。 また、ごく一部ではありますが「社内理解・協力が得られない」(10件)という回答もあり、組織全体としての生成AIへの理解不足も課題として存在することがわかります。生成AIの普及と定着を妨げる主要な要因は、「技術的な安全性・信頼性への不安」と、それに対応するための「企業側の環境整備の遅れ」にあると言えます。今後、企業が生成AI活用を本格的に進めるためには、これらの課題に対して明確な方針を打ち出し、社員が安心して利用できる環境を提供することが不可欠です。Insight. 4AIの活用は「事務作業の効率化」が中心。「分析や企画」など付加価値生産に向けた活用は限定的上位を占めるのは、文章の作成や校正、事務作業の効率化といった、日々の定型業務です。「誤字脱字チェック、表現の改善」(62件)と「定型メールの作成」(58件)が圧倒的に多く、コミュニケーションやドキュメント作成の時間を短縮するために生成AIを積極的に活用していることがわかります。「資料・スライド作成」(47件)、「エクセルの関数の作成」(35件)、「議事録作成」(35件)も件数が多く、これらの作業における生産性向上が主要な目的となっていることが示唆されます。一方、より高度な分析や専門的な業務での活用は、現時点では限定的です。「競合他社の情報分析」(21件)や「契約書ドラフトのレビュー」(13件)、「アンケートの作成・分析」(10件)といった、深い思考や専門知識を要するタスクでは、利用件数が比較的少ない結果となりました。これは、これらのタスクにおいて生成AIの精度や信頼性にまだ懸念がある、あるいは、単純な効率化ツールとしての認識が先行しているためと考えられます。業務における生成AIは、まだ個人の生産性向上を目的とした「アシスタント」としての役割が中心です。特に言語やデータ処理といった日常的な作業で効果を発揮しており、今後はより高度な知的生産活動への活用が広がっていく可能性を秘めていると言えるでしょう。Insight. 5TERMINALのAI機能による「通常業務の効率化」に加え、「データ分析」や「コンテンツ生成」といったニーズも顕在化最も件数が多かったのは「誤字脱字の検知」(101件)であり、次いで「売上データの集計」(81件)、「商品説明文の生成」(78件)が続きます。これらの結果から、ユーザーは単純作業や定型業務の自動化・効率化を最も強く求めていることがわかります。特に、コミュニケーションやデータ入力、情報整理といった日常的に発生するタスクをAIで効率化したいというニーズが高いようです。上位には入らないものの、「カスタムレポートの生成」(62件)や「売れ行き商品の確認」(59件)といったデータ分析・活用機能も高い関心を集めています。また、「画像認識によるタグ付け」(57件)や「商品説明文の生成」(78件)といったクリエイティブなタスクの自動化にも期待が寄せられています。これは、単純な効率化だけでなく、より付加価値の高い業務にAIを活用したいという意欲の表れと言えるでしょう。一方、「TERMINALへの問い合わせに対する回答」(26件)や「バイヤーからの質問に対する回答」(23件)といった、対話を通じて情報提供を行うアシスタント機能は、比較的ニーズが低い結果となりました。このことから、ユーザーは現時点では、対話型のAIよりも、明確な目的を持ったタスクを自動で実行するAI機能を求めていると考えられます。総括として、ユーザーはまず、日常的な業務の負担を軽減する実用的なAI機能を求めています。その上で、データ活用やコンテンツ生成といった、より高度な機能への期待も高まっていることが明らかになりました。総括ファッション業界における生成AIの活用は、現状では日常業務の効率化が中心であるものの、データ分析やコンテンツ生成などへの付加価値を生み出す業務にも高いニーズがあることが調査で明らかになりました。この結果を踏まえ、TERMINALが掲げる「Always your buddy.」というステートメントのもと、これらの課題を解決するAI機能を開発・提供することに加え、単なるツール提供に留まらず、業界で働く方々がAIを使いこなすためのノウハウや市場動向といった「体験」もあわせて提供することで、みなさまの生産性向上と業界全体の発展に貢献していきます。調査概要調査テーマ: ファッション業界における生成AI活用の実態調査調査方法: インターネット調査調査機関: 自社調査調査期間: 2025年7月18日〜7月31日有効回答数: 147名調査対象: TERMINALを利用するファッション業界従事者留意事項: 複数回答可能な設問については、回答件数の合計が有効回答数と一致しない場合があります回答者の属性その他の回答結果